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肝がん既存治療のメカニズムの一端を解明 ~将来の免疫チェックポイント阻害剤との併用治療に期待!~

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本研究のポイント

◇肝がん患者において、既存治療である血管新生阻害剤またはTACEなどが、早期にがん微小環境の免疫状態に影響を与えていることを明らかにした。
◇肝がんでは、免疫チェックポイント阻害剤に既存治療を併用することで、相乗効果が得られることが期待される。

概要

大阪市立大学大学院医学研究科・肝胆膵病態内科学の河田則文教授、榎本大准教授、小田桐直志病院講師らの研究チームは、レンバチニブという血管新生阻害剤または肝動脈化学塞栓術(TACE)で治療を受けた肝がん患者の血液で、16種類の可溶性免疫チェックポイント分子※1を測定したところ、治療導入の1週間後に早くも複数の分子の濃度が有意に変化していることを発見しました。この発見は、肝がんに対しては既存の治療法であっても、がん微小環境の免疫状態に影響を与えている可能性を示しています。

肝がんは、日本で年間3万人近くが亡くなる重要な疾患であり、治療法について研究が進められています。がん免疫療法である免疫チェックポイント阻害剤※2は様々ながんで使われ効果をあげていますが、肝がんにおいては単剤での効果は認められていません。今回の研究成果より、肝がんに対しては免疫チェックポイント阻害剤に血管新生阻害剤またはTACEなどの既存治療を併用することで相乗効果が得られる可能性が期待されます。

本研究成果は2020年7月24日(金)21時(日本時間)に国際学術誌「Cancers」(IF= 6.126)に掲載されました。

補足説明

※1 免疫チェックポイント分子・・・自己の細胞や組織への不適応な免疫応答や過剰な炎症反応を抑制する分子群。

※2 免疫チェックポイント阻害剤・・・腫瘍免疫をつかさどるリンパ球の一種であるT細胞の抗腫瘍活性を活発にさせることで、がん細胞の排除を促す新しいタイプのがん治療薬。

掲載誌情報

【雑誌名】Cancers (IF = 6.126)
【論文名】Early change in the plasma levels of circulating soluble immune checkpoint proteins in patients with unresectable hepatocellular carcinoma treated by lenvatinib or transcatheter arterial chemoembolization
【著者】Naoshi Odagiri, Hoang Hai, Le Thi Thanh Thuy, Minh Phuong Dong, Maito Suoh, Kohei Kotani, Atsushi Hagihara, Sawako Uchida-Kobayashi, Akihiro Tamori, Masaru Enomoto, and Norifumi Kawada
大阪市立大学大学院医学研究科肝胆膵病態内科学
【掲載URL】https://www.mdpi.com/2072-6694/12/8/2045

資金・特許等について

本研究は下記の資金援助を得て実施されました。
科研費『活性化星細胞はサイトグロビンを介して肝細胞のがん化に直接的に関与するか?』(19H03641)、科研費『Cytoglobin overexpression inhibits liver fibrosis and cancer development via anti-oxidant function』(19K08428)