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新生児低酸素性虚血性脳症に対する自己臍帯血幹細胞治療 ―第Ⅰ相試験が終了、第Ⅱ相試験へ―

プレスリリースはこちら

この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆2/23 共同通信、産経新聞(電子版)
◆2/24 読売新聞、朝日新聞、大阪日日新聞

概要

 180220-1.jpg大阪市立大学大学院 医学研究科 発達小児医学分野の新宅 治夫(しんたく はるお)教授 [右写真]を代表とするグループが取り組んでいる新生児低酸素性虚血性脳症で出生した重症仮死児への自己臍帯血幹細胞治療の研究は順調に進捗しており、第Ⅰ相試験の基準となる6症例目の安全性検証が平成29年10月に終了しました。国内第1例目となった平成27年4月のケースをはじめとして、いずれも経過は順調であったことから、平成30年1月10日の独立症例検討委員会で安全性が確認され、2月6日の特定認定再生医療等委員会において継続可能判定を受け、このたび第Ⅱ相試験開始のための準備をする運びとなりました。

研究概要

 180220-2.jpg重症仮死の主因である周産期の低酸素性虚血性脳症(HIE)は、出生時の脳への血流遮断により脳神経細胞が低酸素および低血糖に陥ることで引き起こされる脳障害で、意識障害やけいれんなど、さまざまな神経症状を引き起こします。周産期のHIEは脳性まひの主たる原因であり、出生1,000人に対し1~3人の割合で生じています。
 これまで周産期のHIEには低体温療法が用いられてきましたが、そのうち半数は重篤な後遺症が残っているのが現状です。いったん脳性まひの病態を呈すると現在の医学において有効な治療法はないため、新生児期の治療で脳性まひを未然に防ぐことが極めて肝要です。
 本研究グループが取り組んでいる「自己臍帯血幹細胞治療」とは、低酸素性虚血性脳症となった新生児に、自分の臍帯血から採取した幹細胞を出生後24時間ごとに3日間かけて点滴投与する治療法で、脳障害の回復を目的としています。自身の臍帯血を用いているので拒絶反応を防ぐことも可能となります。
 この研究はAMED 平成26〜28年度「再生医療等実用化研究事業」の「低酸素性虚血性脳症に対する自己臍帯血幹細胞治療に関する研究」として第Ⅰ相試験を実施し終了しました。また関連研究として、本研究グループは下記の課題にも取り組んでいます。
◆「脳性麻痺に対する臍帯由来間葉系細胞治療に関する研究」(報告書はこちら
    (AMED 平成28年度「成育疾患克服等総合研究事業―BIRTHDAY」に採択)

 なお、現在11施設で自己臍帯血幹細胞治療の共同研究を行っていますが、新生児における低酸素性虚血性脳症は年間で200例以上発症しており、施設数が十分とは言えません。第Ⅱ相試験の症例数は第1相試験の10倍程度必要とされるため、本研究グループでは参加施設数の拡大に向けた呼びかけを行っています。ご興味をお持ちの施設は、ぜひ研究代表者までご連絡ください。
※埼玉医科大学・東京大学・東京女子医科大学・国立成育医療研究センター・名古屋大学・淀川キリスト教病院・

 大阪市立総合医療センター・大阪市立大学・国立循環器病研究センター・先端医療センター・倉敷中央病院

参考

低酸素性脳症の新生児へのさい帯血幹細胞治療 臨床研究を開始(平成27年5月12日掲載)
新生児低酸素性虚血性脳症に対する自己臍帯血幹細胞治療の国内第一例男児が元気に退院(平成27年5月29日掲載)
・AMED 平成26年度開始課題 および成果報告
 【URL】http://www.amed.go.jp/program/houkoku_h27/0102007.html