公立大学法人大阪市立大学
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ケーブル給電マルチコプターの 操縦アシスト機能を開発

プレスリリースはこちら

この研究発表は下記のメディアで紹介されました。

◆8/21  日刊工業新聞
◆9/1  橋梁新聞
◆12/3  毎日新聞  

研究の概要


飛行実験の様子

 大阪市立大学工学研究科機械物理系専攻の今津 篤志(いまづ あつし)講師らのグループは、特別な技量がなくても簡単に操縦できるケーブル給電マルチコプターの操縦アシスト機能を開発しました。地上から有線で電源供給を行うケーブル給電マルチコプターは、ケーブルに引っ張られる影響を考慮しながら操縦する必要がありますが、マルチコプターに張力センサと角度センサを搭載することで、マルチコプターに加わるケーブル張力の大きさと方向を測定し、ケーブルによる影響が自動で解消されます。そのため操縦が簡単になり、特別な訓練を行うことなく本来の操縦に集中することが可能になります。

論文掲載について

本研究成果は、8月20日(日)午前0時(日本時間)に「Journal of Robotics and Mechatronics」に掲載されました。

【発表雑誌】Journal of Robotics and Mechatronics
【論文名】 Control Method for Helicopters Tethered to Ground Station with
                Compensationfor Disturbance Caused by Cable Tension
【著者名】   Atsushi Imadu, Takanori Sakai, and Tadao Kawai
【掲載URL】 https://www.fujipress.jp/jrm/rb/robot002900040737/

<研究の背景>

 現在、橋梁やトンネルなどのインフラの老朽化が社会問題となっています。点検等の目視検査の代わりにマルチコプターが活用されていますが、バッテリー容量による飛行時間の制限が問題となることがあります。地上の電源からマルチコプターに有線ケーブルで給電を行うケーブル給電マルチコプターを用いると飛行時間がほぼ無制限となりますが、ケーブルによってマルチコプターが引っ張られるため、操縦者はケーブル張力の影響を考えながら操縦する必要があります。操縦者には、高い技量が求められますが、そのような技量を持つ人材は少ないのが現状です。ケーブルから受ける影響を考えずに操縦できるマルチコプターの開発が急がれていました。

<研究の内容>


ケーブル給電マルチコプターの力のバランス

 ケーブル張力のベクトルの値を算出するために角度センサと力センサをマルチコプターに搭載しました。重力とケーブル張力の合力に釣り合ってバランスを保ちながら飛行するために必要なマルチコプターの角度と推力の大きさを求め、自動制御の角度目標値や出力推力に組み入れることで、ケーブル張力の影響を自動的に打ち消すことができます。そのため、操縦者はケーブル張力による影響を考えずに操縦することができます。

 <期待される効果>

 ケーブルの張力の影響を自動で補正することにより、ケーブルの無い一般的なマルチコプターを操縦することができる操縦者が、特別な訓練を受けることなくケーブル給電マルチコプターを操縦することができるようになります。これにより操縦者の人材不足を解消することが期待されます。
 また、地上局から水平に離れた地点でマルチコプターが傾いた状態でバランスするような飛行も容易になるため、現在は地上局のほぼ真上だけの飛行で運用されていることが多いケーブル給電マルチコプターの活用範囲を広げることが期待されます。

<今後の展開について>

 ケーブルが振動したときも、ある程度の抑制効果が得られています。しかし、特定の振動周波数で不安定になる場合が有り、対策を継続検討する必要があります。
 有線給電による大電力を活用し、マルチコプターにハンマーを搭載し打音調査を行うなど、工具で作業を行う用途への展開を目指しています。